月刊・デンタルニュース

(平成28年8月号)

歯の働きは食べ物を噛むだけでなく、認知機能を維持・改善する効果があると言われています。歯と歯を 噛み合わせた時の刺激は、歯の根っこの周りにある歯根膜から脳に伝わり、その刺激が脳の記憶、思考、 意欲、感覚を司っている部分を活性化します。 具体的には、海馬(かいば)と前頭前野(ぜんとうぜんや)と呼ばれる部分です。認知症は脳の萎縮や血流 低下が主な原因です。あごを開いたり閉じたりする咀嚼運動は脳を刺激するほか、酸素と栄養を送ることから 認知機能の低下を予防する絶大な効果があります。そこで今月は、『よく噛んで認知症を予防・改善しよう』 をご紹介します。

記憶や感情は海馬と前頭前野

海馬とはタツノオトシゴの別名で、形が似ているところから、その名前がついたと言われています。脳の中心 に近い場所にあり、記憶を整理する働きを担っています。前頭前野は額の裏側にあり、大脳皮質の約30%を占める 大きな領域です。コミュニケーション、感情の制御、記憶のコントロール、意思決定等の働きを担っています。 今までの研究で、歯の本数が少ない人は、海馬と前頭前野の容積が減少している傾向があり、咀嚼と認知機能 とは密接な関係があると考えられています。

噛むことで記憶力がUP!!

65~76歳までの高齢者1067人にガムを噛んでもらい、脳をMRIで調べてみると、海馬の活動が20%も増加している ことが分かりました。さらに、ガムを噛む前と後で、写真を見てもらい、どれ位正確に記憶しているのかをテストして みると、ガムを噛んだ高齢者の正答率の方が約20%も高いという結果でした。

落ち込んだ認知機能が回復する!?

歯を削り取って噛めなくした老齢マウスの認知機能は、低下することが知られています。そのマウスの歯を治療して 、再び噛めるようにすると、歯を修復した1週間 後には落ち込んだ記憶が見違えるほど回復しました。人間の場合でも、歯が抜けてしまったら、その部分を 入れ歯等で補い、ちゃんと噛めるようにすれば、認知機能が甦る可能性があると考えられます。 過去に実施された厚生労働省の調査では、自分の歯が20本以上ある人を基準とした場合、歯がほとんどなく、 入れ歯も未使用の人は認知症になるリスクが約2倍でした。ちなみに歯がほとんど残っていない場合でも、 入れ歯を使っている場合は1.2倍でした。 ただし、入れ歯が合っていない人には、認知症が多いという報告がありますので、しっかり噛める入れ歯を 使用することが大切です。脳を刺激することと、脳の血流が増加することがポイントです。

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