(平成28年12月号)

歯科ではむし歯や入れ歯の治療以外にも、口内炎や口腔乾燥といった口内粘膜も診療領域の一つです。口腔の粘膜には無数の小さな唾液腺があり、そこからさらさらとした唾液が分泌されています。頬や唇と歯の表面がくっつくことなく滑らかに動き、食事や会話を楽しみ、自在に表情を作ることができるのは、口腔内が常に潤っているからです。ちなみに、この粘膜からは全身の健康状態を推測することもできます。例えば、口腔粘膜の表面には多数の毛細血管が走っているので健康な人はピンク色ですが、貧血があると蒼白となります。普段気にすることのない口腔粘膜ですが、高齢になると汚れが溜まりやすく病気の原因となります。そこで今月は『粘膜ケアの必要性』をお届けします。

経管栄養でも口の中は汚れる??

総入れ歯で歯がない方や経管栄養で口から食事をとれない方の場合、口腔ケアの必要はないと誤解されることがあります。しかし口腔粘膜には、新陳代謝によって剥がれた古い細胞や痰等の汚れが溜まり、細菌が繁殖します。また入れ歯を使っている場合には入れ歯が触れている部分に沿って汚れが付着しますし、麻痺がある場合には麻痺側の口腔粘膜にたくさんの食物残渣が付きます。

自浄作用が働かない…

通常、健康な人では噛んだりしゃべったりする時、舌や唇、頬が動くことで汚れが落ちて、それを唾液できれいに洗い流すという自浄作用が働いています。しかし高齢者や要介護の方の場合、噛む・会話するなどの動作が減り、加齢と薬の服薬によって唾液の分泌量が健常人の2割以下にまで低下することもあり自浄作用が極端に低下しています。そのため汚れや細菌を放置すると、誤嚥性肺炎のリスクが高くなってしまうのです。以上のことから、歯の有無や食事等の状態に関わらず、口腔粘膜のケアはとても重要なのです。

口腔粘膜ケアによる効果

粘膜のケアは、全身疾患の予防にもなり次のような効果が期待できます。
・誤嚥性肺炎を予防する
・口臭を予防する
・唾液の分泌を促進される
・爽快が得られる
・味覚、嗅覚の感覚をよみがえる

このように、口腔粘膜ケアを行うと様々なメリットがありますが、上手にケアするには専用の器具を使用することをおすすめします。次号では、スポンジブラシの使い方をご紹介したいと思います。

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