(平成30年8月号)

4月の介護報酬改定で、口腔衛生に関する大きな変更があったのをご存知でしょうか。 今まで施設だけでしか算定できなかった口腔衛生管理体制加算と口腔衛生加算(※)が、 居宅系入所施設でも算定可能になったのです。また同時に算定の基準が緩和されたことから、 歯科衛生士による専門的口腔ケアを多くの要介護者が受けられるようになりました。 不顕性のものも含めて、入所している要介護者の誤嚥性肺炎を予防したいという 厚生労働省の考えがはっきりと読み取れます。そこで今月は口腔衛生管理の充実が図られる きっかけとなった平成28年の厚生労働省による調査研究を中心に 『要介護高齢者に対する効果的な口腔ケア』についてご紹介したいと思います。

口腔衛生管理の実施と口腔衛生状態

施設入所では多くの場合、ご本人又は介護職員の方が歯磨きをしています。この日常的なセルフケアに対して、 月1回歯科医師(歯科衛生士)がチェックし、助言や指導することで、口腔衛生状態は良好になります。 このような口腔衛生の管理ができている状態で、さらに歯科衛生士が行う専門的口腔ケアについて実施の 有無や頻度による効果を調べています。まずプラーク付着については極端な差は認められませんでしたが、 これはプラークが食後8時間程度で形成されることや、歯ブラシではどんなに丁寧に磨いても、 1〜2割は落としきれず残ってしまうからです。



次に歯石の付着状況を見ると、専門的口腔ケアを受けている場合、ほとんど付着がありません。 これは、セルフケアでは落とせない歯石を専門的口腔ケアでは専用の器具を使って除去することが可能だからです。 また専門的口腔ケアの頻度は、月2回の場合でも月4回の場合と同程度の効果であることがわかります。こうした結果を踏まえ、 口腔衛生の質を落とさず、口腔衛生管理の基準見直しを行ったのです。

効果的な口腔ケア方法とは・・・

上記のように毎日の歯磨きに、月2回の歯科衛生士による専門的口腔ケアを加えることで、 口腔衛生は大変良好に保たれることがわかります。口腔衛生や口腔機能は、誤嚥性肺炎をはじめ、 日常生活動作(ALD)や生活の質(QOL)等、全身の健康にも大きく影響することが明らかとなっています。 口腔環境の悪化は要介護高齢者にとって大きなリスクです。継続的な口腔管理で、リスクの軽減を目指しましょう。



(※)月1回、歯科医師(歯科衛生士)から口腔ケアの助言や指導を受けると介護施設側が算定できるものが 口腔衛生管理体制加算(30単位/月)、加えて歯科衛生士が月に2回口腔ケアを実施すると算定できるのが 口腔衛生管理加算(90単位/月)

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