(平成30年10月号)

先月、最新の平均寿命が厚生労働省から発表され、男女とも過去最高を更新しました。 一方、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」との開きは男性で約9年、女性で約12年 となかなか縮まりません。国は2020年までに健康寿命を1年以上延伸することを目標に揚げて 様々な取り組みを行っています。健康寿命を延ばすポイントは、
①栄養と口腔機能
②運動
③社会参加(人とのつながり)
の3つと言われています。
今まで歯科では「歯数」に着目してむし歯と歯周病という口腔疾患の予防・治療を目的に 8020運動を推進してきました。それに加えて現在は「口腔機能」にも着目し、 機能低下を予防する取り組みを進めています。 そこで今月は、「オーラルフレイル(口腔の衰え)」についてご紹介したいと思います。

■口腔の衰え 死亡リスクが2.1倍に!

介護認定のない高齢者約2.000人の口腔を調査した結果、介護リスクを高める危険な兆候は 次の6つであることがわかりました。
①歯が20本未満
②滑舌の低下
③噛む力が弱い
④舌の力が弱い
⑤半年前と比べて硬い物が噛みにくくなった
⑥お茶・汁物でむせることがある。
このうち3項目以上に該当した16%の人は他の人に比べ、身体虚弱が2.4倍、要介護認定が2.4倍、 総死亡リスクが2.1倍と高いことが判明しました。 日本歯科学会では、こうした介護リスクを高める原因となる口腔機能の衰えを 「オーラルフレイル」と定義し、3年前から介護予防の取り組みや啓蒙活動を行っています。

■それは口腔機能低下のサイン

オーラルフレイルの症状は滑舌低下、わずかのむせ、食べこぼし、噛めない食品の増加と いった些細なものです。 しかし噛めない→柔らかい物を食べる→噛む能力低下 というサイクルを繰り返すうちに、食欲の減退や口腔機能低下が進むという悪循環に陥ります。また社会性の低下や口腔に対する関心の低下が始まることも分かっています。

■オーラルフレイルを予防するには…

オーラルフレイルは滑舌、舌圧、嚥下機能、咀嚼機能といった機能の低下が原因です。 まずは歯科医院での健康診断や口腔機能のチェックを行うことが必要です。 その上で日常生活では水分補給や「パ・タ・カ・ラ」を含む単語や早口言葉を口に することで、唾液腺マッサージを行う等、口腔機能を活性化する取り組みを行います。 オーラルフレイルは放置すると、食べる機能が低下して低栄養となり要介護状態に進みます。 まずは口腔の些細な衰えに気付くこと、そして口腔機能の維持や向上に努めることで健康寿命を 延ばすことができます。

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